世界の熱帯から寒帯に2000種以上が知られ、日本に21属約150種。日本の固有植物は71種2亜種33変種。その姿は高木、低木、つる性、着生とさまざまである。日当たりの良い岩地や風当たりの強い場所、ピートなどの酸性土壌を好む種も多い。従来のツツジ科は多系統であることが明らかになっており、APGV分類体系では、ガンコウラン科、イチヤクソウ科、エバクリス科を含めて広義のツツジ科として扱われている。
葉は単葉、螺旋状に着生するか輪生、対生もある。花は総状花序で両性花、花冠は合生し3〜7裂で漏斗状または壺形。雄しべは5または10、葯の先端に穴があり、ここより花粉が出る。花粉は4集粒。子房上位。果実は刮ハで多数の小さな種子を含む。液果もある。
ツツジ科は大きく3つのグループに分けられる。子房が上位で果実が子房室の間で割れ、葯に付属体をもたない群はツツジ亜科、子房が上位または半下位につき、果実が子房室の背面で割れるか液果になる群はアルプトス亜科、子房が下位で液果を結ぶ群はスノキ亜科に分類される。スノキ亜科は葯室の先が管状に伸びる特性もある。
科名はギリシャ語でツツジを表すEricaにちなむ。
(印象)ツツジの根は細く密集していて、大きくなると移植しづらい気がする。酸性土壌を好むものが多いので、赤玉土や鹿沼土などと素直になじむ。逆にブロック塀の傍などは、根が張るまで何年も根気良く育てる。一度、元気になれば、毎年いっぱいの花を咲かせてくれる、庭には必須の花に違いない。
アセビ属(Pieris)・・・本州に広く分布するアセビ、屋久島にはヤクシマアセビ、奄美大島にはアマミアセビ、沖縄本島にはリュウキュウアセビが知られる。アセビは花序が下垂し、他は花序が直立する。最近の分子系統解析の研究から、花がやや小型のヤクシマアセビは、リュウキュウアセビやタイワンアセビに近縁であることが示されている。奄美のアマミアセビは、葉の幅が広く花冠が大きく、沖縄の渓流型のリュウキュウアセビから最近になって分けられた。アセビについては、中国大陸にも記録があり(Flora of China)。これが日本のアセビと同種か否か、今後検討が必要である。
イチヤクソウ属(Pyrola)・・・イチヤクソウ科より編入。北半球北部に約20種、日本に7種あり、2種が固有。葉はすべて根生。花は数個〜10数個が下向きに咲く。果実は下から5片に割れる。
イワナシ属(Epigaea)・・・北半球の温帯に3種が知られる。
ギンリョウソウ属(Monotropastrum)・・・イチヤクソウ科より編入。植物体は白色。果実も白色でよく向きにつき、球茎、液質で裂けない。
ジムカデ属(Hamimanella)・・・北半球の寒帯に2種、日本に1種が自生する。
アカモノとハリガネカズラが固有である。これらは花が葉腋に1個ずつつくことで、花が総状花序となるシラタマノキと区別される。アカモノは、花は赤みがかり、果実(萼)は赤くなる。ハリガネカズラは、果実(萼)は白色となり、葉は長さ1cm程度と小型である。
ツガザクラ属(Phyllodoce)・・・北半球の亜寒帯〜寒帯に7〜8種あり、日本に3種自生する。葉は広線形、互生、葉枕につく。花は合弁、5数性、長い柄の先に下向きにつく。果実は上向き、上から5片に割れる。
ヒカゲツツジ亜属 subgen. Rhododendron
日本のシャクナゲの仲間は、花が黄色いキバナシャクナゲを除くすべてが固有である。ホソバシャクナゲ(エンシュウシャクナゲ)は葉が細く、過剰苞葉片は開花時も残る。東北〜中部地方には葉裏の枝状毛が短く花冠が5裂するアズマシャクナゲが生える。枝状毛がより長いものには、紀伊半島・四国・九州に花冠が7裂し雄蕊が14本、葉裏に真綿状の毛が密生するツクシシャクナゲ、本州、四国には成熟した葉裏にはロゼット状毛のみとなるホンシャクナゲ、東海地方には花冠が5裂するキョウマルシャクナゲ、島根県隠岐にはオキシャクナゲが知られる。屋久島には、花が開くと次第に白色となるヤクシマシャクナゲがある。背丈が低く葉裏に褐色の綿状の毛が密生し高標高に生育する狭義ヤクシマシャクナゲと、より低標高に生え背丈が高く葉裏の毛が少ないオオヤクシマシャクナゲは、変種として区別することもある。北海道・本州中北部・四国に分布し、花が白〜淡紅色の
ハクサンシャクナゲは、成熟した葉裏は無毛あるいは軟毛があるのみである。
花冠が1cm以下と小さいものに、コメツツジの2変種チョウジコメツツジ、オオコメツツジ、ハコネコメツツジがある。チョウジコメツツジは花が4裂し雄蕊が花冠の外に伸びず、オオコメツツジは花弁が4〜5裂し、葉がより大きく3脈が顕著という特徴がある。ハコネコメツツジは花弁が5裂し花糸や萼などに白い毛が密生する。
腺点や腺毛がないか少なく粘らないものには以下の種がある。花は1〜1.5cmと小さく、花芽から1個花が咲くウンゼンツツジ、その白花変種シロバナウンゼンツツジ、花が大きく1つの花芽から複数の花が咲くものの中には、花が春葉の伸びた後に咲き、渓流型で雄蕊が5本のサツキ、葉は卵形で雄蕊が7〜10本となるマルバサツキ、その変種で花が小型のセンカクツツジがある。花が春葉の伸びる前後に咲き、雄蕊が7〜10本のものに、関東周辺にはオオヤマツツジ、静岡県愛鷹山近隣にはアシタカツツジが知られ、雄蕊がふつう5本のものには、花が小型のミヤマキリシマ、葉が披針形で花が藤色のフジツツジ、葉は卵形で花は朱色から赤紫色となるヤマツツジが知られる。ヤマツツジには地理的にまとまりのある集団が変種として区別され、五島列島や鹿児島県甑島にはサイカイツツジ、愛知県豊橋市付近にはミカワツツジ、広島県、山口県、島根県にはヒメヤマツツジ、伊豆七島や伊豆半島にはオオシマツツジが知られる。ツツジ_@、
クルメツツジを含む。
落葉性で花がふつう葉の展開後に咲き、花芽が長さ10〜15mm、幅3〜5mmと小さいミツバツツジ類は、他の属内分類群と比較して種が細分されており分類が極めて難しい。葉柄、子房、果実に腺点があって粘るものには、ミツバツツジ、ウラジロミツバツツジ、アマクサミツバツツジ、ヒュウガミツバツツジ、タカクマミツバツツジがある。ミツバツツジは、葉がやや大きく1個の花芽に2〜3個の花が咲く。複数の変種が知られ、関東〜近畿地方に分布する雄蕊が5本となるミツバツツジ、北海道には雄蕊が10本となるヒダカミツバツツジ、紀伊半島、滋賀県や岐阜県、四国、九州には雄蕊が10本となり、子房には腺点とともに長毛が混じるトサノミツバツツジ(アワノミツバツツジを含む)、鹿児島には雄蕊が10本で花期がやや早いハヤトミツバツツジがある。花芽からふつう1個の花が咲くものに、葉裏が白色を帯びるウラジロミツバツツジ、葉裏は淡緑色で、花は葉とほぼ同時に開くアマクサミツバツツジ、葉の展開前に花が咲くヒュウガミツバツツジ、葉の展開後に花が咲くタカクマミツバツツジが知られる。
葉柄、花柄、子房、果実に腺毛はないものには以下がある。花冠裂片が楕円形で葉に鋸歯がないものに、花柱の下部に腺毛が生えるトウゴクミツバツツジ、葉柄に毛がないユキグニミツバツツジ、葉柄から葉裏主脈にかけて軟毛が密生するダイセンミツバツツジ、葉がやや厚くなるツルギミツバツツジ(アカイシミツバツツジを含む)がある。九州には、サイゴクミツバツツジ、ヒメミツバツツジ、キリシマミツバツツジ、ヤクシマミツバツツジが知られ、果実は葉の形状、毛の有無で区別される。花冠裂片が狭楕円形で葉にやや鋸歯があるものに、宮崎、熊本、薩摩半島に花がやや小型のナンゴクミツバツツジ、宮崎、大隅半島にはオオスミミツバツツジ、本州太平洋側にはキヨスミミツバツツジが知られる。関東以西の本州、四国、九州に分布するコバノミツバツツジは、花が小型で葉脈がよく目立つ。
レンゲツツジ亜属 subgen. Pentanthera
クロフネツツジ、ゲンカイツツジを含む。
ドウダンツツジ属(Enkianthus)・・・日本〜ヒマラヤに20種弱が知られる落葉低木で、日本産種では花序が散形状となる ドウダンツツジ以外は固有である。枝を層状に広げる特徴がある。葉は楕円形、踞歯がある。花は釣鐘状、下向きに咲く。
サラサドウダンの変種は、九州に生え、花冠の切れ込みが深い。カイナンサラサドウダンは花序が5〜10cmと長く伸び、8〜20個の多数の花をつける。シロドウダンおよび花が紅色となる品種ベニドウダンは、花冠の裂片が細かく切れ込む。中部地方以北に分布するアブラツツジは、葉に光沢があり、花冠が小さいつぼ型で白い。よく似たコアブラツツジは、東海〜近畿、四国に分布し、若枝や花序が無毛である。葉が線形となるアブラツツジの変種ホソバアブラツツジが記載されているが、自生は確認されていない。
ヤチツツジ属(Chamaedaphne)・・・1属1種。若枝や葉に鱗状の毛を密生する。花冠は壺状。花は枝先の小型の葉腋に1個ずつぶら下がり、総状花序のように見える。果実は球形の刮ハ。
花が小型で雄しべが5本(他は8〜10本)のコヨウラクツツジ以外は固有である。ホザキツリガネツツジ、ウラジロヨウラク、ムラサキツリガネツツジは花が5数性、ホザキツリガネツツジは花序が長く、花芽の鱗片が花時にも残る。萼裂片が長いものをガクウラジロヨウラクとしてウラジロヨウラクから区別する見解もあるが、同一個体内でも変異があるため、本書(日本の固有植物)は区別しない。ただし、関東や中部地方にはウラジロヨウラク、東北地方にはガクウラジロヨウラクが多い傾向が見られる。ムラサキツリガネツツジは萼が5裂し、花柄に長い繊毛があり、神奈川県箱根にのみ分布する。ツリガネツツジが萼が裂けない。ヨウラクツツジ、ヤクシマヨウラクツツジは花が4数性で、それぞれ九州、屋久島、岩手県五葉山に生育する。参考文献
日本の固有植物 (国立科学博物館叢書)
高山に咲く花 増補改訂新版 (山溪ハンディ図鑑)
園芸植物 (山渓カラー名鑑)
最終更新日 2021/08/14